研究概要 |
本研究は、「チャンピオンは、特定の遺伝子を受け継いだ者の中からのみ生まれるのかもしれない」という作業仮説に基づいて進められる。その第一歩として、平成7年度は、ビタミンD受容体遺伝子多型性の分布が、一流競技者と一般人の間で、また競技種目間においても異なっているか否かを検討する。 陸上競技投擲種目(32名)、陸上競技長距離種目(49名)、一般学生(90名)の同意を得て、末梢血を0.5ml採取し、遺伝子(DNA)をSDS-フェノール法により抽出し、PCR増幅装置を用いてDNAを約100万倍に増幅した後に、遺伝子の型(多型性)をBsml,TaqlおよびApal酵素を用いた制限酵素断片長多型法により判定した。 日本人のビタミンD受容体遺伝子多型は主にBbAATt,BbAaTT,bbAaTT,bbaaTTの4種類から構成されていおり、骨密度はBbAATt<BbAaTT<bbAaTT<bbaaTTの順に高くなっていると言われているが、本研究においても被検者の大部分がこの4種類のタイプに分類された。ビタミンD受容体遺伝子多型性の分布は陸上競技長距離走者と一般学生との間においては差が認められなかったが、陸上競技投擲選手は長距離走者や一般学生とは異なり、高骨密度と相関があるといわれているbbaaTT型が多い傾向が認められた(P<0.05)。 特定の遺伝的要素を持った者が、特定のスポーツ競技において活躍している可能性があり、その一つとして投擲競技は骨密度を高くするビタミンD受容体遺伝子型をもつという関係が示唆されたと考えられる。今後の研究は、長距離種目のスタミナに特有な遺伝的マーカーの一つとして考えられるミトコンドリア遺伝子の多型分析の検討へと進めたい。なお、いままでの研究成果の一部を、第50回日本栄養・食糧学会において発表する予定である。
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