1.本研究では、学習指導スタイルを組織的に観察する方法の開発をめざし、特に、教師と学習者の主導性の視点から、授業を4次元で観察・記述する方法を完成させた。4次元とは(1)各授業場面の時間量の次元、(2)授業の場面転換に関する主導性の次元、(3)各授業場面内の主導性の次元、(4)教師の相互作用に関する主導性の次元である。 2.学習者による形成的授業評価法の標準化り、これを学習スタイルの有効性を判断するための方法として適用した。また、授業観察者の授業評価の構造を明らかにするとともに、これに基づいて、15項目からなる観察チェックリストを開発した。 3.学習指導観察法を適用して、62の小・中学校の体育授業を観察・分析した。この結果、この観察法から、授業における教師・学習者の主導性の発揮のしかたがよく理解されることがわかった。このような主導性の発揮のしかたは、発達段階や運動種目(教材)によっても異なることが明らかになった。さらに単元過程においても変化し、単元はじめは教師が強く主導性を発揮し、中盤から次第に学習者が主導性を発揮していることがわかった。 4.この観察法による分析結果と、学習者による形成的授業評価との相関分析の結果、単元なかにおいては、教師が主導性を発揮するよりも、学習者が発揮した方が多きな授業成果を収めることができることがわかった。このことは、今日文部省が推進している自主的・自発的学習のよさを実証することにもなった。 4)関連研究として、体育授業中の諸変数が授業成果に及ぼす影響について研究し発表した。またこれまで継続して研究してきた教師の相互作用行動を掘り下げ、子どもにとって有効なフィードバック行動やその表現のしかたについて研究成果を得た。
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