研究概要 |
平成9年度 研究まとめ 本研究は平成7年度から平成9年度にかけて行われるもので、本年はその最終年の報告である。研究はおもに以下の2点について進められた。 1.小学校6年生(12歳)で全国小学生陸上競技大会100mで入賞した男子児童8名について、その後中学校3年生(15歳)にかけて疾走能力、疾走フォーム及び脚筋力の発達を縦断的に検討した。その結果は以下のようであった。 1)疾走速度とストライドは12歳から14歳にかけて8.83m/sから9.57m/s、1.94mから2.11mへそれぞれ有意に増加した。この間の疾走速度の増大はピッチよりもおもにストライドの増加によるものと考えられた。疾走速度とストライドの間には有意な偏相関が認められたが、ピッチには有為な偏相関は認められなかった。一方、疾走速度と非支持時間には正の偏相関が、支持時間には負の偏相関がそれぞれ認められた。 2)等速性膝筋力と疾走速度の偏相関をみると、屈曲力の角速度180,300deg/sと有意な関係が認められた。また、12歳から15歳にかけて疾走速度の増加量と角速度180,300deg/sにおける膝屈曲力の増加量の間に有意な関係がみられた。 3)12歳から15歳にかけて疾走速度が向上した事例(NI)と停滞した事例(IK)の等速性膝筋力を比較したところ、NIの膝屈曲力の角速度180,300deg/sがIKよりも顕著に増加した。 2.上記研究1.の被験者の中で、高等学校まで継続した事例2名の疾走能力および疾走フォームについて12歳から18歳にかけて縦断的発達をとらえた。その結果は以下のようであった。 1)IKとNIのスプリント能力を比較すると、12歳から13歳まではIKのほうがNIよりも優れた能力を発揮していたが、14歳から18歳にかけて、NIの方がIKよりも100mスプリントタイムや疾走速度が優れていた。両者のこのスプリント能力が逆転した原因は、IKのピッチやスライドは加齢につれて顕著な向上を示さなかったが、反対にNIはピッチ、ストライドともに14歳以降さらに向上させていることによると考えられた。 2)疾走フォーム関わる下肢筋群の働きから、膝関節屈曲パワーはIKは加齢にともなう顕著な増加はみられなかったが、NIは12歳から14歳にかけて著しく増加し、その後は停滞傾向であった。IKとNIの両者でこれらの各関節まわりのピークパワーをみると膝関節屈曲パワーの値が13歳以降、各年齢においてNIの方がIKよりも顕著に大きい値を示した。
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