身体活動を著しく制限される脊髄損傷者の日常の行動は、下肢の運動まひを伴うために車椅子に頼らざるを得ないが、その操作や移動に当っては上肢の筋力の大きいことが求められる。本研究では、脊髄損傷者の筋力と骨密度との関係を明らかにするとともに、骨密度の増加を目的とした筋力トレーニング・プログラムを開発することである。 本年度は、障害の重い頚髄損傷者の協力を得て上肢筋力・骨密度・血液性状および車椅子バスケットボールのフリースローにおけるシュート動作を3次元的に解析した。その結果、バスケットボール競技に参加している頚髄損傷者(6名)の肘関節屈曲力は、右上肢が20.8〜48.8Nm、左上肢が16.8〜52.2Nm、肘関節伸展力は右上肢が15.4〜40.5Nm、左上肢が23.2〜46.6Nmであった。被検者の障害部位は第6・7頚髄とほぼ同じレベルであるが、得られた筋力値は広く分布し、受傷時期などとの関係は明白ではなかった。骨密度および血液性状は検査を継続しているところである。 身体障害者のスポーツのなかで最もポピュラーな車椅子バスケットボールは医学的リハビリテーションの一環として行なわれているが、多くに頚髄損傷者はバスケット・ゴールまでボールを到達させる筋力が発揮できない。とくに手首の掌屈開始からボールのリリースまでにボールに加わる平均筋力は、ボールをゴールまで届かせる群の13.5Nに比して、届かない群が8.9Nと有意に低いことを明らかにした。
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