身体活動を著しく制限される脊髄損傷者の日常の行動は、下肢の運動まひを伴うために車椅子に頼らざるを得ないが、その操作や移動に当っては上肢の筋力の大きいことが求められる。本研究では、日常生活に多用される動的筋力に着目し脊髄損傷者の筋力と骨密度との関係を明らかにするとともに、骨密度の増加を目的とした筋力トレーニング・プログラムを開発することである。 本年度は、脊損者男性15名と頚損者男性10名を対象にして肘関節の等速性筋力測定を行った。その結果、伸展・屈曲動作の等速性筋力は脊損者の方が頚損者より大きいことが認められた。これは頚損者が神経障害により上腕筋群が委縮しているためであり、肘関節の運動に際して脊損者は主に上腕筋群、頚損者は主に前腕筋群・上肢帯筋群の運動が関与していると示唆された。 高負荷レジスタンストレーニングが骨密度に及ぼす影響をバイオメカニクス的に検討するため、若年男子パワーリフタ-10名、同年代の対照群11名の腰椎、大腿骨、全身の骨密度を二重X線吸収法(DEXA法)を用いて測定した。パワーリフタ-と対照間で、腰椎、全身の骨密度については有意な差が認められたが、大腿骨骨密度に有意差は認められなかった。また、パワーリフタ-の腰椎骨密度とパワーリフティングの記録との間にも高い相関が認められた。これらの結果より、高負荷レジスタンストレーニングが全身および腰椎骨密度増加に有効であり、またバイオメカニクス的立場から圧縮応力が骨密度増加に有効であることが示唆された。
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