本年度に計画していた実験はすべて終了し、現在結果の解析と考察を行なっている。陸上競技中・長距離選手のべ24人を対象にして、トレッドミル上で走行させ、心電図およびペドグラムを記録し、コンピューターを用いて足の着地のタイミング(着地の瞬間と先行するR波との間隔=R-St)とRRを連続的に計測した。R-Stを横軸に瞬時RRを縦軸にとると、R-Stが約100msのきRR間隔は最小になり、R-Stが約200msのときRR間隔は最大になる傾向があり、両者の間に正弦波状の関係が認められた。走行時のRR間隔の平均値は約400msであったことから、この所見は、駆出期に着地するとRR間隔は短縮し、拡張期に着地するとRR間隔は延長することを意味していると考えられる。このような現象の起こるメカニズムについて現在検討中であるが、これまでのところ、(1)着地に伴う感覚的刺激によって心臓抑制中枢が影響されるために起こる、(2)着地に伴う機会的刺激によって血圧が変化し、圧反射を介して心周期が影響を受けるために起こる、などの可能性が考えられている。 また脚のリズムを160歩/分に固定し、スピードあるいは勾配を漸増することによって心拍数を漸増させた場合についても実験を行なった。負荷の増加に伴って心拍数は顕著に増加するがピッチは固定されているため、軽い運動からはじめると、初め心拍数はピッチより低いが、次第にピッチに近付き、やがてそれを凌駕するようになる。その際両者が一致したままの状態を保ちいわゆるカップリング現象が起こるが、条件によってそれが起こったり起こらなかったりする。カップリングの起こる条件および発生機構について現在検討している。
|