既に本研究代表者による科研費国際学術研究の一環として、シベリア永久凍土ツンドラ地域でのメタンガス発生についての現地調査を平成7年7-8月に実施した。釧路湿原を類似ツンドラとして見なし、シベリアでは観測しえない夏から冬にかけての湿原からのメタンガス発生量変化についての継続的な観測を実施した。平成7年6月末に釧路湿原の調査予定地の選定のための現地調査を実施した。湿原の西側に位置する鶴居村温根内通称赤沼付近を設定し、国立公園への立ち入り許可申請等を環境庁に行った。併せて地中温度計測のために温度記録計を同地点に設置した。さらにLANDsat TMデータによる解析を行った。7-8月の間はシベリアでの観測を行っていたが、9月末から10月にかけて同定点でのメタンガス発生量の観測を行った。また併せて発生量に関連し、影響を与える要素として、水質、酸化還元電位、電気伝導度等の測定も測定した。この観測結果から、釧路湿原でのメタンガス発生量は400mg/m2/dayにも達することが判明した。これはシベリアツンドラ地域の観測値の4倍に匹敵する値である。また酸化還元電位は200mv/cmと比較的還元的な環境にあることが分かった。 冬季にかけての観測として12月末にメタンガスフラックス観測を実施した。積雪が比較的多く、地盤凍結も5cmとまだ浅かったため、また深さ80cmでの地温が高い状態で維持されていたため、メタンガスフラックスは依然とし高レベルであり、最大100mg/m2/dayであった。2月20日から冬季観測を実施した。この時期の土凍結深さは40cmであった。凍土中からのメタンガス発生はほとんど観測されなかった。しかし。赤沼の凍結氷中には特異な形状を示す気泡が含まれており、数%の濃度の高レベルのメタンガスを検出した。 凍結過程に及ぼす積雪の影響を調べるために、同地域で宇宙航空研と共同で、航空機に搭載したマイクロ波レーダによる観測、赤外ビデオによる観測を併せて実施した。
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