研究課題/領域番号 |
07458023
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
高橋 伸幸 北海学園大学, 教養部, 教授 (20202153)
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研究分担者 |
曽根 敏雄 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (10222077)
佐藤 謙 札幌学園大学, 教養部, 教授 (70128817)
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キーワード | 高山帯 / 森林限界 / 温量指数 / 周氷河環境 / 大雪山 / 気象観測 / 地温観測 |
研究概要 |
日本の高山帯における周氷河環境を明らかにするため、平成7年度より継続して北海道の大雪山、羊蹄山、および本州の飛騨山脈双六岳において気温・地温観測を行っている。 今年度の研究では、大雪山での気温実測値に基づいた森林限界付近の温量条件が明らかになり、日本の森林限界における温量指数とされた15℃・月の値よりも高い値(18.3℃・月)が得られた。これはヨーロッパアルプスなどに比べ高度の低い日本の山岳地域では山頂現象の影響が森林限界高度にまで及び、その低下をもたらしたと考えられる。その結果日本の山岳上部には高山帯が広がることになった。一方、この高山帯における気温観測では、温量指数15℃・月を下回る温量条件が示され、さらに、森林限界と同高度にある山稜上の風衝砂礫地でも15℃・月を下回る温量指数が得られた。このことは、一度森林限界の低下が生じると、その場所での気温支配要因が変化し、気温の低下がもたらされる。これまで、日本の山岳には植生の垂直分帯としての高山帯は存在しないとされていたが、本研究の結果からは、温量的には大雪山をはじめとする日本の山岳に明らかな高山帯を認めることができる。また、植生的にも高山要素や周局要素は実際に存在している。とくに大雪山ではパルサ湿原を中心にツンドラ環境が出現している。 大雪山の高山帯における気象および地温観測の結果、夏季の地温支配要因として降雨が重要であることが示された。これまで周氷河地域では降雨の影響についてはほとんど言及されることは無かった。温暖湿潤地域に属する日本では夏季の降雨が地中へ浸透する際に熱を効率的に運搬し、地温へ影響を与える。特に周氷河地域においてはこのことが地温上昇をもたらし、凍土の融解を促進すると考えられる。 現在も、大雪山、羊蹄山、中部山岳の双六岳を中心に気象観測を継続中である。また、地形調査、植生調査なども併せて行っている。これらの観測資料が蓄積され、諸調査結果がまとまれば、日本の高山帯の周氷河環境が広域的に、しかも総合的に解明されるであろう。
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