小中学校の算数・数学科で取り上げる内容の中で「図形」にかかわる内容は、「数と計算」(算数科)及び「数と式」(数学科)の内容に次いで多く、重要な内容である。これからの教育では、その質の充実が強く要請されており、算数・数学科の指導においても、論理的な思考に優れ、豊かな直観を働かせることのできる児童・生徒の育成を図る方向で新しい学習指導要領が作成され、それに基づく教育は小・中学校においてそれぞれ全面実施されている。ところが、図形のカリキュラムについての基礎的研究は、数と計算や数と式に関わる内容に比べて歴史が浅く、低調である。 本研究は、図形概念の系統及び図形領域で取り上げる論証の系統の2つの系統に焦点を当てるとともに小・中・高等学校の全体を視野に入れて図形領域のカリキュラム改善の基本的な視点を明らかにし、それらに基づいて、21世紀を見通した図形領域のカリキュラム試案を作成し提案することを目的とし、平成7・8・9年度の三ヵ年に渡って展開されることとなっている。その際、特に(ア)図形概念の系統と論証の系統の相互の関連に着目すること、(イ)具体的な操作や実験・実測、アクション・プル-フなどの活動を内容として位置づけること、(ウ)論証を構成する活動を重視することの3点に留意する。 本年度は、基礎的な研究を中心として研究を推進した。その第一は、我が国の中学生における図形の論証能力の実態を既に実施された国内諸調査の分析を通して把握することである。第二は、図形の概念形成についての基本的な問題点を先行研究などにもとづいて明らかにすることである。第三は、我が国への図形教育の移入・定着の過程を分析するとともに図形の論証指導の今日的課題を明らかにした。いずれに、年度末に刊行予定の第一年次報告書(80頁程度)に収録される。
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