研究概要 |
マルチメディア時代を迎えて,学校現場は押し寄せるメディアの波に飲み込まれ,進むべき道を見失いかけている。残念ながら,これまでの教育工学研究には実践的なものが少なかったため,教育現場に情報教育の指針を提供するまでには至らなかった。 本研究は教育現場に接近することを特色としている。特に,高度情報通信社会の中で教育現場が情報教育を計画し実施する場合に支えとなる学校システムの在り方を明らかにすることを目的とする。 平成8年度はいくつかの学校を選択して,訪問による聞き取り調査を展開した。対象としたのは,滋賀大学教育学部附属中学校,新潟県中郷村立中郷小学校,奈良県新庄町立新庄中学校,宮崎県西米良村立越野尾小学校,同村所小学校,同西米良中学校,富山県福野町立福野中学校などである。いずれの学校にも学期に1回程度は足を運び,情報機器の整備状況,授業の実際,教員研修の様子などを観察した。また,管理職や研究主任,情報教育担当者などに学校の情報教育史や典型的な実践についてインタビューを実施した。さらには,電子メールを通じて,それらの様子を継続的に聞き取った。 観察やインタビュー,電子メールのデータを整理してみると,次のような4点が情報教育の普及と発展の要因であることが分かった。 1.コンピュータの台数や性能の整備 2.良質のソフトウェアの準備 3.選択・総合学習カリキュラムの構成 4.組織の改編・拡張 特に組織の改編・拡張については,性能向上のスピードが極めて速い情報機器を導入し,適切に授業の中に位置づけるためには,学校においてキーパーソンが複数名必要になることが明らかになった。
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