研究概要 |
昨年度確立した質的な授業分析方法論,すなわち教育技術を判断命題として記述し,カ-ル・ポパ-の批判的合理主義の立場を参考にしながら組織的に修正する方法の適用事例をさらに拡張し,その確立を図った。具体的には,教師対児童生徒という授業過程の質的分析から,授業の設計場面における教師間の共同授業設計場面の分析へ,そして校内研修における授業カンファレンス場面へと分析事例を拡張して行った。このような場面を選択した理由は,単に分析し,命題を記述することから,記述された命題の伝達過程および教授相互のコミュニケーションによって形成される命題の特性を明らかにするためである。その結果,共同授業設計場面の分析からは,教師の実践的思考様式に関する命題モデルと図式モデルを構成し,授業カンファレンス場面の分析からは,特徴的な複数の命題を抽出できた。これらの分析はいずれもオンラインのデータ化から分析に至るまでの中間段階として表計算ソフトを活用するという手続きによって実施されており,昨年度考案された分析方法の枠組みおよびその手続きは一定の成果をあげてきているといってよい。今後の研究としては,まず第一にオンラインのデータ化をさらに容易にすること,例えばランダムアクセス可能なビデオ映像を利用する.複数の分析結果を比較できる等の工夫をすることである(前者については昨年度より開発を進めている授業分析ツールの改良によって対処することができる)。そして第二に,分析事例をさらに積み重ねることによって,質的分析をプログラムとして記述することである。
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