研究概要 |
1.1996年2月に精神薄弱学級,情緒障害学級を対象に実施した全国調査の結果から,前年度に引き続き,(1)少人数化,(2)重度化・多様化,(3)担当教員の専門性,の実態を分析し,併せて障害児学級の教育実践上の困難とその諸要因について検討した。障害児学級の少人数化,重度化・多様化については担当教員の大多数もそのことを認めていた。これら担当教員の75%以上が教育実践や学級経営に困難を感じており,自由記述による回答からそれを(1)教育内容・方法,(2)児童生徒,(3)担任自身,(4)教育条件,(5)校内体制,(6)保護者,(7)進路,(8)その他,に整理し,障害児学級の実態との関連で検討し,障害児学級教育の改善課題の構造化を試みた。 2.1997年3月に言語障害学級を対象に実施した全国調査(回収率53.8% 有効回答374校)の結果から,回答校の54%が通級教室で,今後も固定学級から通級教室への移行が続きそうなこと,他校通級校が82%にも及ぶこと,放課後指導が多いこと,担当児童生徒数が多いこと,1対1指導が多いこと,担当者の経験が浅く研修の機会や専門家との連携が少ないこと,などの特徴が摘出された。学級担任としての悩みや困難に関する自由記述を(1)担当する子ども,(2)指導内容・指導方法,(3)担任自身,(4)学級・教室の運営,(5)指導体制,(6)その他に分類して整理した結果でも,固定学級・通級教室とも,(3)担任自身にかかわる問題,(4)学級・教室をめぐる問題が圧倒的に多かった。 3.障害児学級の少人数化として全国的に特異な位置にある奈良県における具体的な授業研究として,奈良市北西部の小学校4校の合同学習について継続的な観察を実施し,その成果や問題の分析を通して少人数学級の困難克服の可能性と限界について考察した。またそれと対局的な位置にある奈良教育大学附属中学校障害児学級における授業分析を通して,集団学習のもつ教育的意義と固定学級の優位性をあきらかにした。
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