研究概要 |
今年度は,これまでに行われた地震被害想定に関する評価と,被害想定手法の検証を行った.地震被害想定に関する評価では,これまでに行われた地震被害想定と地震危険度評価について調査を行い,その概要を整理するとともに,実施担当者にヒアリングを行い,結果がどのように施策に反映されたか,また反省点は何かを尋ねる.これらから,被害想定の有用性について整理し,問題点を明らかにした. これと同時に,被害想定手法の検証に着手している.対象地震としては,当初考えていた釧路沖地震に加えて,兵庫県南部地震を選択した.現状の被害想定手法としては,代表的と考えられる東京都(平成3年度,南関東地震)と神奈川県(平成5年度,神奈川県西部地震)の想定で用いられたものを取り上げ,これらの方法と実際に起きた被害を比較することにより,地震被害想定手法の精度の検証を行っている. このような検証シミュレーションを行うためには,対象地域の地盤,建物,ライフラインなどのデータベースを準備している.またこれらのデータについて,被害推定計算を行い,結果を地理情報システム(GIS)で表示するようなシステム開発のため,ワークステーションを導入した. ここまでの研究の進捗状況は,地震被害想定のまとめと問題点の整理は,ほぼ予定通りに進捗している.しかし,兵庫県南部地震の後,各自治体や国の機関が,様々な防災計画の見直しを行っており,それらの動きについては、現時点ではまとめるのが困難と思われる.また,被害推定手法の検証については,兵庫県南部地震による詳細な被害データがなかなか入手できず,今年度だけでは終らないであろう.地理情報システムを用いた即時的被害推定システムの提案についても,現在さまざまな動きがあり,それらを視野にいれながら,今後柔軟に対応しようと考えている.
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