原子力プラント運転安全性の一層の向上のためには、ヒューマンインタフェース知能化は重要な意義を持つが、そのために必要な技術開発の一環として、複数の運転員がクル-として協調して行う問題解決を支援するための基礎技術開発を行うことが本研究の目的である。今年度はこの目的実現のための以下のような重要な中間的課題についてその解決方策を案出しその有効性を評価した。 (1)異常の予兆検知と弁別を支援する個別の情報処理技術 (2)異常原因事象の固定のためのマルチエージェント協調技術 (3)運転員による意思決定過程のモデル化ならびに影響因子探索技法 これらの内、(1)に関しては従来から研究開発を進めてきた、フラクタル解析ならびにウエーブレット解析と在来手法を総合したゆらぎ信号の多面的特徴抽出法の改良洗練化により、また(2)に関しては複数ニューラルネットワークの構造最適化学習とファジイ統合により、目的とする高い性能を実現できることが確認されている。また(3)については階層分析法とファジイ積分を併用した独創性の高い手法を開発できた。次年度以降はこれらの成果をふまえて、本年度導入した大型画面表示装置を活用した運転支援情報提供方式について、インタフェース知能化のためのより具体的な検討を進める計画である。なおそのための基本指針についても、原子力プラント熟練運転員や計装系設計技術者との数次にわたる討論を通じてすでに独自の視点に立った枠組みを構築しつつある。
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