研究概要 |
1.概要 圧力容器鋼の照射脆化機構解明には、異なった情報を与える種々の手段を組み合わせて、総合的に解釈を進める必要があるが、本研究では電気抵抗測定法、マイクロ硬さ法、およびミクロ組織観察を適用する。平成7年度は電気抵抗測定装置を整備し、硬さ測定によりFe-Cuモデル合金の焼入後焼鈍実験を行った。 2.電気抵抗測定装置の整備 本研究では10^<-2>dpa程度の少量の照射を受けた鋼材について照射後の焼鈍実験を行うので、電気抵抗の微量の変化を精度良く測定しなければならない。このため現時点で可能な限りの、ナノボルト・プリアンプを付けたデジタル・マルチメータを中心とする電気抵抗測定装置を整備した。さらにクライオスタット等を準備した。 3.電気抵抗による焼鈍測定の解析 やや精度の劣る測定系で行った前年度までのイオン照射後の焼鈍測定結果を再解析し、焼鈍温度約850Kまでに存在する数種の回復(一部は逆回復)過程について機構モデルを検討した。その結果は1995年9月にPrahaで開催された圧力容器照射損傷機構国際ワーキンググループ(IGRDM-6)会合で報告した。 Fe-Cuモデル合金の焼入後の焼鈍過程の硬さによる測定 脆化感受性の高い銅を含む圧力容器鋼を模擬したFe-Cu (Fe-0.27%, -0.47%, -0.6%, -1.2%CU)モデル合金を融製し、850℃で溶体化処理後の時効過程をマイクロビッカース硬さ測定により調べた。時効とともに、硬さは最初上昇し、ピークを経た後低下する。Fe-1.2%Cu合金についてピークに到る迄の過程の活性化エネルギーを求め、機構について解釈を与えた。 なお今後は時効過程をさらに詳しく調べるとともに、イオン照射後の焼鈍過程についても調べる予定である。
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