地球温暖化の防止に対する農業生産による貢献を目指して、要因を耕うん法(耕起CT区/不耕起NT区の2水準)×作付様式(単作/単作/混作の3水準)×除草(有/無の2水準)×反復(3)とする実験計画のもとで、作物と雑草の共生に関する実験、さらには圃場における土壌呼吸の測定を行った。その結果、(1)雑草乾物生産量では、混作区より単作区で多量の雑草が生育していたが、NT区で必ずしも雑草が多くはなかった。(2)作物茎葉乾物生産量では、1作目と3作目(ともにオオムギとコムギを供試)でCT区の値が大きかったが、2作目(ソルゴ-とトウモロコシを供試)でNT区の値が大きかった。(3)穀実乾物生産量では、1作目と3作目の場合1、2位はともに除草処理であったが、3位は無除草処理であった。CT区とNT区間に顕著な差はみられなかった。(4)<作物+雑草>の乾物生産量のデータおよび原単位を用いて計算した二酸化炭素固定量には、NT区とCT区間に顕著な差はみられなかった。森林において落葉果樹が吸収する二酸化炭素量をベースとして圃場における作物生産の効率を比較してみると、1毛作では最低で2倍、最高で7倍、2毛作では最低で8倍、最高で11倍という顕著な二酸化炭素固定の効果がみられた。(5)圃場における土壌呼吸の測定結果によれば、作物の生育期間中ではNT区とCT区間に顕著な差はみられなかったが、作物収穫後から次作の作物発芽の間においてはNT区の値が大きくなった。 以上の結果を総合的に判断すると、不耕起栽培の有効性および複数作物の混作、さらには雑草との共生を含めて今後の農業生産システムの要素として構築していくことの可能性が示唆された。しかし、同時にいくつかの解決すべき課題が残っていることも指摘した。
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