本研究の目的は、複雑地形上での内部境界層の形成過程やその中での汚染物質の拡散過程を風洞実験と数値シミュレーションによって解明することである。平成8年度の研究実績は以下の通りである。 1。本研究に用いるために開発中の2次元及び3次元乱流風洞の特性がさらに詳細に解明された。 (1)乱流特性を表すパラメータには、平均風速、乱れ強度、乱れスケール及びパワースペクトル密度などが通常考えられている。これらはすでに十分な精度で風洞内に再現できる。大気拡散現象を解明するには、さらに大気中の乱れ応力(せん断応力またはレイノルズ応力)の分布を作り出す必要がある。このため、送風機の回転数制御によって、流れ方向の乱れを制御し、同時に風路中に置かれた振動翼列によって鉛直方向の乱れを発生させた。これらを個々に制御することで、レイノルズ応力の鉛直分布を作り出せることが明らかとなった。 (2)乱流の制御方法には、目標に合わせるために、繰り返し法によって漸近する方法と、送風機や振動翼の遅れ特性や風洞自身の遅れを補正することで、特性を改善する方法がある。この両方のプログラムを開発した。 2。汚染物質の拡散過程のシミュレーション (1)内部境界層内での汚染物の拡散過程に適用できるパフ・フューミゲーションモデルを改良した。 (2)このモデルを適用して、内部境界層内の拡散過程をシミュレートし、同時に、乱流風洞内でモデル実験によって検証する。このため、風洞内でのトレーサー濃度の計測装置を準備中である。
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