生命の創り出す系であるリビング・システムと閉鎖生態系(CES)の動態を研究するため、1)大気圏の酸素濃度測定、2)同じくCO2濃度測定、3)水圏の溶存酸素濃度測定、4)ATP濃度測定、5)pH測定などを長期間継続した。1から3は24時間連続観測された。また、リビング・システムの不安定性を調べる実験、開放系と閉鎖系に対する性質の知見を得るための実験を行った。それらの知見は次の通りである。 CESはそれ特有のダイナミズムと振動状態を有している。例えばそれは、微小擾乱によって突如変化する可能性を持っている。しかし、また、強力な復元力をも持っている。これらの性質の中で、水圏で起こる突然の無酸素状態の出現がもっとも注目すべき現象である。これらの事態は、CESの見かけ上の安定性にも関わらず、ある種の不安定性がCESに存在するということを示しているのである。また、このようなリビングシステムの性質を理論的に研究するために、我々がやっているオートポイエ-シス論のような新しい生命論の展開がどうしても必要である。それは「共生」とか「環境」といった事柄に対して新しい概念を与えるだろう。 リビング・システムとしてのCESの安定性や擾乱への動態研究が、巨大な一閉鎖生態系を成す地球の性質理解のためにさらに必要である。CESの結果を地球に当てはめるなら、生命と環境とは共進化する系を成しているといえる。それらは決して切り離されてはいない。ところが、現行の気候変動理論は皆、地球をCESとして考えていないものになっている。
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