研究概要 |
都市域から排出され水環境に負荷を与えている微量有機物質のうち,発ガン性に由来する物質を追跡し,そのリスクの大きさを評価することを目的としている。 数ある発ガン物質のうち,都市下水処理場処理水中に検出されてきた物質を検索することとした。そのスクリーニングのために,ヒト由来であることを検証するため,し尿処理場の調査を実施した。対象をヘテロサイクリックアミンに絞り,その抽出のために,ブルーレ-ヨン法,芳香族アミン検出系のバクテリアアッセイ,HPLC,MS分析を組みあわせた。その結果,ヒトし尿中に発ガン性のTrp-P-2が同定できた。これは食品の焼コゲ由来と推定できる。Trp-P-2は,生物処理により分解されていない。また,同様に都市下水処理場にもTr-P-2は検出でき,処理水中にも残存していた。 処理場下流域の河川水中にも検出できた。 これらの濃度をアセスメントしたところ,生し尿中で,焼こげのある食品と同等の,毎日2L,60kg 70年間の発ガンリスクは,10000人に1人であった。都市下水処理場の処理水は10^<-6>〜10^<-7>となり,一般にいわれる発ガンリスク10^<-6>より若干低いリスクであった。河川水中,また下流の浄水場取水口は10^<-8>〜10^<-9>となり,ほぼ消失するものの,生態系への影響は無視できない。他の発ガン性のヘテロサイクリックアミンの検出ととれた。引きつづき継続年度で検討を重ねる。
|