研究概要 |
内海・内湾のような沿岸域は、穏やかで生産性が高く、古くから良好な漁場として、また憩いの場として利用されてきた。しかし、このような自然環境は1950年代の高度成長期から、人口集中や高度利用による埋め立てされたり、護岸工事によってコンクリートで固められたり、汚濁の進行にする中で消失してしまった。現在日本の海岸線のうち、自然の海岸はわずかしか残っていないといわれており、かつての健全な内湾生態系は危機に瀕している。本研究では汚濁の進んだ内湾を浄化する方法の一つとして人工海浜システムを提案し、パイロットプラント現場実験を構築し、定期観測と連続調査を通して、人工海浜システムによる汚濁海水の浄化機能について検討した。得られた成果をまとめると次のとおりである。 1)内湾の汚濁が顕在化するのは主に夏季であり、冬季にはかなり水質が回復することが確認できた。夏季の汚濁の特徴としては、活発な内部生産による水中のChl-aの増加と、SS濃度が高い状態が持続するということであるため、夏季の水質の汚濁を抑えることが重要である。 2)礫浜はこの夏季の高いSS濃度に対し大きな除去効果を示した。それに伴って礫浜を通過したのちの海水の透明度が格段に向上したことが実証できた。また、礫浜が懸濁物質の除去に効果的であること、礫浜内で有機物の分解や硝化が起きること、リンが礫浜システムに吸着すること等を解明した。 3)礫浜への海水の流入過程と流出過程では大きくその機能が違い,流入過程では硝化とリンの吸着,流出過程では脱窒と一部リンの脱離が起こっていること、脱窒を効率的に行わせるためには,海水の礫浜中における滞留時間を十分にとる必要があること、付着海藻や付着貝類を適切に管理することで礫浜の浄化効果の低下を防ぐことができること等がわかった。
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