本研究ではDNAでの水素引き抜きや電子移動がDNAの構造や配列に依存することに注目し、水素引き抜き部位や電子移動のスピードからDNAの局所構造を読み取ろうとするものである。遺伝子のスイッチングに関与する局所構造は細胞内で短い期間存在するので、光化学的手法により瞬時にまた局所的に反応させる手法は非常に有効である。このような目的から、今年度は以下の3点について検討を行なった。 (1)B型DNA中におけるプロモウラシルやヨードウラシルの光反応による水素引き抜き反応について立体特異的に重水素化したDNAを合成し光反応検討を加えた。その結果2'位の酸化は2'α位の水素引き抜きでおこることが明らかとなり、光遺伝子治療法を設計する上で重要な知見を得た。 (2)B型、A型、Z型、ループDNAなど既知構造をもつDNAフラグメントを用いて、DNA構造と光電子移動の効率、水素引き抜きの効率についてのパラメーターを集積した。その結果、B型では1'位2'位の競争的酸化反応が、A型では選択的1'位の酸化が、Z型では、これまでに観測されたことのない2'位の水素化が起こることを見い出した。またZ型においてはB型では反応性の全くないGBrU配列においても反応性がみられ、Z型構造において電子移動効率が飛躍的に増大することが示唆された。 (3)この光反応を利用し、実際に生物学的に興味のあるDNAについて局所的な構造を解析を計画した。その目的で遺伝子増幅装置(PCR)を用いて、任意のDNAフラグメントのチミン残基をすべてブロモウラシルで置換する実験系の確率した。このDNAを用いてイソプロパノールなどの水素原子ドナー存在下の光照射することにより、生成するウラシルラジカルを定量的にウラシルにし、酸素的にその部分を切断し、切断の効率を塩基配列決定用ゲル電気泳動を用いて解析した。その結果、A^<Br>U^<Br>U配列で高効率でラジカルが生成することを見い出した。切断効率に基づいて構造解析を行なった。
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