研究概要 |
本年度は非常に強い脱分極作用を示すアクロメリン酸類縁体のより有効な合成法を検討した。4-(N-アリールエチルオキサゾール-2-オンイル)-4-ブト-2-エン酸エステルにトリフロロアセトフエノンの存在下光照射し、ベンジル位の水素を引き抜いてラジカルを発生させ、これを分子内のαβ-不飽和エステル部分と反応させてピロリジン環を形成する反応を鍵としている。この時ピロリジン環の1,2位にはオキサゾロン環が結合しており3,4位には側鎖を持つことになるが、アクロメリン酸と同じく2,3位がトランス、3,4位がシスとなることが望ましい。実際には単に溶液中光照射しても、この反応はわずかしか進行せずKFを加えることで50%まで進行した。また、2,3-位の立体配置は常にトランスとなるが3,4-位はシスのものトランスのものが1対1であった。未反応の50%を回収して再び使用することにすると全段階を通して約15%の収率で最も活性の強いo-メトキシフェニル類縁体(MFPA)を合成出来たことになる。その後条件検討をした結果エステル部をメチル-メトキシアミドとすることでシス/トランス比を7/3にまですることが出来た。また、KFの効果を検討した。テトラブチルアンモニウムフロリドやKIでは効果がないことからF-やK^+の効果ではないと思われるが、どの様な効果かは不明である。さらに以上の光反応とは別にベンジル位をケトンとした以外は上記反応の基質と同様のものを作り、これをヨウ化サマリウムで処理してケチルラジカルを発生させ、分子内二重結合との反応を試みた。この場合ピロリジン形成時に生じた4-位の三級アルコールと3-位の酢酸残基がシスとなってラクトンを形成すると96年度に報告した合成経路に引き継がれるが、トランスの方が多く出来てしまった。現在この立体選択の改良とトランス体からの合成を検討中である。
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