最近の核酸合成法や遺伝子工学の発展によって、核酸分子の相互作用を利用して遺伝子の発現を抑制する試みが可能になってきた。いろいろな機能をあわせもつ機能性核酸分子の開発もいよいよ現実化してきたと言える。この機能性核酸分子として最も有望なのが、リボザイム(ribozyme)である。リボザイムは、エイズや癌などの遺伝子を切断する新しいタイプの″核酸薬剤″として期待されている。また、遺伝子の発現を抑制するアンチセンス法やアンチジーン法においても有効であることが報告され始めている。しかしながら、このような機能性核酸分子の開発にあっては、解決しなければならない問題も少なくない。その主な問題点は、リボザイムがヌクレアーゼなどに対して非常に不安定であることである。 そこで、本研究では、この問題の改善のために、ヌクレアーゼ耐性に勝るDNAをリボザイムに導入すること(キメラ型リボザイムの作成)を考え、キメラ型リボザイムの作成する前に、RNA/DNAハイブリッドの安定性を検討した。このハイブリッドの安定性が予測できるような方法が開発できれば、多様なリボザイムの開発が容易になるからである。この核酸の安定性予測に関して、我々はRNA/DNAハイブリッドの安定性の予測モデルといて最近接塩基対モデル(nearest-neighbr model)の適用が妥当であることを明らかにした。また、異なる塩基配列を有する60種のRNA/DNAハイブリッドの熱力学的諸量を実験より求め、その熱力学的諸量より、精度の最近接塩基対パラメータを開発した。その結果、通常のカチオン存在下で、RNA/DNAハイブリッドの安定性を、6%以内の誤差精度で予測することが可能となった。さらにDNA/DNAの安定性に関するパラメータの新たに開発したことより、キメラ型リボザイム作成の指標が得られたものと考えれる。
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