研究概要 |
大腸菌における分泌蛋白質の細胞質膜透過装置は、4種類のSec因子(A,Y,E,G)によって中心部分の構造が形成されている。このうちSecAは、可溶性蛋白質であるにも関わらず、膜透過反応中に膜内に深く挿入し、また膜から脱離するという構造変化を繰り返している。挿入・脱離はそれぞれATPの結合・分解によって引き起こされ、この変化によって分泌蛋白質の膜内への挿入、すなわち膜透過が進行されると考えられている。SecY,SecE,SecGは膜内在性因子である。SecYとSecEは蛋白質の通過するポアを形成すると考えられている。SecGは膜透過反応を著しく活性化する役割をもっている。本年度の研究で得られた最大の成果は、SecGが膜内で大きな構造変化繰り返すことによって膜透過反応の効率を上昇させることを明らかにしたことである。 SecG(12kDa)は膜を2回貫通し、N末端およびC末端はいずれもペリプラズム側に配向している。ところが、ATP存在下で蛋白質膜透過を開始させた後、ATP加水分解を阻害すると、SecGの膜内配向性は反転していることを見出した。さらに、反転した構造はATP加水分解を再開させると元に復帰した。膜内配向性の反転・復帰は、それぞれSecAの挿入・脱離に共役していることが強く示唆された。また、膜内配向性の変化を阻害したSecG変異体は、膜透過反応を促進する活性を失っていた。これらの結果から、SecGの構造変化はSecAの挿入・脱離を促進し、この促進により蛋白質膜透過反応が効率よく進行するというモデルを提出した。
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