研究概要 |
1.ブタ胃幽門部粘膜より新規のエンドペプチダーゼを単離,精製し諸性質を検索した。本酵素は分子量約37,000のセリンプロテアーゼであり,種々のペプチドへの作用特異性を調べたところ,VIP(Vasoactive Intesfinal Polypeptide)をかなり特異的に分解するユニークな作用を有し,Ghi-Met結合を主に切断することが判明した。活性発現に界面活性剤の存在を必要とすることから膜結合性のプロテアーゼであると考えられる。本酵素はまたβ-アミロイドペプチドのGln-Lys結合にもかなりよく作用することが知られたが,その特異性の発現には基質ペプチドのP_1部位のみならず,周辺の二次構造も関係することが推定された. 2.ブタ胃幽門部粘膜のミクロソーム分画よりトリプシン(膵)と同様な性質を持つエンドペプチダーゼを単離,精製し,gastric trypsinと命名した。本酵素は酵素的にも構造的にもほとんど膵トリプシンと区別し難い性質を持つが,膜結合性を持つ点で異なっている.トリプシンが細胞内で見つかった最初の例であり,細胞内トリプシンとしての新しい機能が推定された. 3.ラットのエンテロペプチダーゼcDNAをクローニングし,その塩基配列を決定し,1058アミノ酸残基からなるプロエンテロペプチダーゼの全一次構造を推定した。この結果,プロ酵素は,プロセンシングより,ブタエンテロペプチダーゼについて本研究者が明らかにした結果と同様,ミニ鎖,軽鎖,重鎖の三本鎖構造となることが推定された。またmRNAの組織分布の検索から小腸において特異的に発現されていることが示された. 上記研究と関連して,大腸菌シグナルペプチダーゼの発現と部位特異的変異と化学修飾法によるFrp300の活性発現における重要性の証明,ブタ卵巣セリプロテアーゼFollipsinの基質特異性の検索,クロコウジカビプロクターゼBのcDNAクローニング,プロクターゼBの熱高性解析,ブロメラインインヒビターの一次構造および^1H-NMRによる二次構造の解析などを行った。
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