プロテインC凝固制御系における分子間相互作用に関する分子生物学的研究-特に分子内機能ドメインの構造・機能相関の解析-

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07458151
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 三重大学
• 研究代表者: 鈴木 宏治 三重大学, 医学部, 教授 (70077808)
• 研究分担者: 林 辰弥 三重大学, 医学部, 助手 (00242959) ; 武谷 浩之 三重大学, 医学部, 助手 (60222105)
• キーワード: プロテインC / プロテインS / 血液凝固制御機構 / 分子間相互作用 / 機能ドメイン / 先天性プロテインS異常症 / 先天性血栓性素因 / 血液流動性維持機構

研究概要

生命の維持・進展に不可欠な血液の活動性は、主に血管内皮細胞上での血液凝固制御機構や線維素溶解機構の活性化によって維持されている。こうした制御調節機構のなかでもプロテインC凝固制御系(Protein C anticoagulant pathway)は生理的に最も重要である。申請者らはこれまで、本制御系因子のプロテインC、プロテインS(PS)などの分子間相互作用を遺伝子工学的手法やモノクローナル抗体を用いて解析してきた。本課題研究においては、プロテインC凝固制御系の中でも特に重要な分子間相互作用である、(1)PSと活性化プロテインC(APC)の相互作用部位、および(2)PSとXa因子ならびにプロトロンビンの分子間相互作用部位を解析し、これらの因子の構造・活性相関を明らかにすることを目的とした。先ず、(1)の課題であるAPCとPSの相互作用部位に関する研究においては、PSの第2EGFドメインにアミノ酸変異(Lys155→Glu)を有する先天性PS異常症患者血漿から精製した異常PS蛋白および同じ変異を有する組換え異常PS蛋白を用いて解析した。その結果、正常血漿PS蛋白や正常組換えPS蛋白と異なり、異常PS蛋白はAPCに対する補酵素活性を示さず、またこの異常PS蛋白にAPCは結合出来なかった。また、(2)の課題についても(1)と同様に異常PS蛋白を用いて検討した結果、異常PS蛋白は抗凝固活性を示さず、また、この異常PS蛋白にXa因子もプロトロンビンも結合出来なかった。以上の結果から、PSの第2EGFドメインのLys155残基を含む領域はAPC、Xa因子およびプロトロンビンの結合部位として機能し、PSの凝固制御活性の発現に極めて重要なことが明らかになった。今回の研究によって、血液凝固制御調節反応の分子機構の一端を解明出来、今後の有効な抗血栓薬の開発のための蛋白質の構造・活性相関に関する基礎的情報を提示することが出来たと考える。

研究成果

• [文献書誌] Mori T, Takeya H, Suzuki K, et al.: "β2‐Glycoprotein I modulates anticoagulant activity of activated protein C on phospholipids." Thromb. Haemostas.75. 49-55 (1996)
• [文献書誌] Ohnishi K, Nagata K, Suzuki K, et al.: "Stimulation of Sky receptor tyrosine kinase by the product of growth‐arrest‐specific gene 6." J. Biol. Chem.270. 22681-22684 (1995)
• [文献書誌] Hayashi T, Nishioka J & Suzuki K.: "Molecular mechanism of dysfunctional protein S‐Tokushima(Lys^<155>→Glu) in the regulation of blood coagulation." Biochim. Biophys. Acta.1272. 159-167 (1995)
• [文献書誌] Iino M, Takeya H & Suzuki K.: "Characterization of factor Xa binding to fibrinogen/fibrin derivatives. Comparative study with thrombin binding." Eur. J. Biochem.232. 90-97 (1995)
• [文献書誌] Yasuda H, Hayashi T & Suzuki K.: "Molecular cloning and functional characterization of rat plasma protein S." J. Biochem.117. 374-383 (1995)
• [文献書誌] Nakagawa H, Takahashi N, Suzuki K, et al.: "A structural study of the oligosaccharide moeities of human coagulation factor X activation peptide." Glycoconjugate J.12. 173-181 (1995)
• [文献書誌] Suzuki K.: "Molecular Basis of Thrombosis and Hemostasis (Protein C)" Marcel Dekker, Inc, New York (eds.Roberts HR & High KA), 688(31) (1995)
• [文献書誌] Suzuki K.: "Molecular Basis of Thrombosis and Hemostasis (Protein S)" Marcel Dekker, Inc. New York (eds. Roberts HR & High KA), 688(19) (1995)