ショウジョウバエの第2のカルパインに対して特異的な抗体を作製し、既に得ている第1のカルパインに対する抗体と併せて、ショウジョウバエ初期胚を免疫科学的に染色した。その結果、第2のカルパインは、比較的広い分布を示し、第1のカルパインが胚端と予定細胞膜領域に局在するのと対照的であった。したがって、ショウジョウバエ初期胚において、2種類のカルパインは、それぞれ異なる機能が担っていると思われる。さらに、カルパインの機能を明確にするためには、その基質を明らかにすることが必要である。この際、ショウジョウバネからカルパインを得ることは、含量の少なさと他のプロテアーゼの混入によって困難であるため、大腸菌発現系を用いることとし、様々なベクターと培養条件などを検討した。その結果、可溶性画分に活性を有する2種類のカルパインを得ることに成功した。そこで、既に様々な状況証拠から、カルパインの基質となることが有望視されていたアクチン結合タンパク質について、カルパイン感受性をin vitroの実験で検討し、いくつかのそれらに属するタンパク質がカルパインによる切断を受けることを明らかにした。現在、カルパインの接続を受けるこれらのタンパク質の最終的な同定を進めており、同時にその切断部位を特定しつつある。これらの情報を基に、カルパインのタンパク分解を直接モニターできる基質側の特異的抗体を得て、カルパインがショウジョウバエ初期発生過程で果たしている機能を明らかにしようとしている。
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