研究概要 |
脂肪酸のβ酸化は、ミトコンドリアおよびペルオキシソームで行われることが知られているが、本課題ではこの二つのβ酸化系酵素のうちで、初発段階の、ミトコンドリアのアシルCoAデヒドロゲナーゼおよび、ペルオキシソームのアシルCoAオキシダーゼの分子的性質を調べ、両者の比較から、それぞれの脂肪酸代謝における役割を明らかにするものである。 ラットの肝臓のペルオキシソームには、二種類のアシルCoAオキシダーゼ(ACO-I,ACO-II)の存在が知られていたが、昨年度の本研究によって、純粋なACO-I,ACO-IIをそれぞれ初めて得ることができ、ACO-I、ACO-IIの間で基質特異性が異なることを明らかにした。今年度は、ACO-I、ACO-IIと種々の基質アナログの相互作用を、電子スペクトル、共鳴ラマンスペクトルによって調べ、基質アナログの結合様式が両者で微妙に異なり、反応の基質特異性をより分子的に理解することができた。 ACO-I、ACO-IIと同じペルオキシソーム局在のフラビン依存性酸化酵素のD-アミノ酸酸化酵素(DAO)の結晶構造解析を世界にさきがけて完成させることができ、長年不明であったDAOの活性部位の精密構造を明らかにすることができた。 ACO-I、ACO-IIと同様にペルオキシソームに局在しDAOと同じファミリーに属するヒト脳D-アスパラギン酸酸化酵素のクローニングに初めて成功し、そのcDNAの塩基配列と、それに基づくアミノ酸配列を解明できた。さらに、この酵素の大腸菌による、発現系を用い純粋の酵素標品を得、その基質特異性を明らかにした。
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