研究概要 |
グルクロン酸転移酵素(UGT1)は薬物、ステロイド、ビリルビンなどの基質にグルクロン酸を転移する反応を触媒する肝小胞体酵素である。本研究課題のフアミリ-1(UGT1)を指定する遺伝子複合体は、5'上流に基質結合ドメインをコードする第一エクソン(850bp)が約12Kbp間隔でクラスターを形成して配列しており、3'下流に各分子種に共通なUDP-グルクロン酸(UDP-GA)が結合するドメインが1ケ所存在し、抗体産生遺伝子に類似した構造をしている。本年度は特に、この1つの遺伝子座から多数のアイソザイムが発現する機構を検討した。 アイソザイムのカルボキシル基側半分(UDP-GA結合ドメイン)は全て同じアミノ酸配列をしているが、アミノ末端側(基質結合ドメイン)は異なる。これらの分子種のNH2-末端側を特異的に認識するペプチド抗体と、各アイソザイムのCOOH側を共通に認識するペプチド抗体を作製し、タンパク質レベルでの発現を検討した。分子種UGT1B1はビリルビン抱合う活生を有し構成的に発現している主要なものである。マイナ-分子種としてUGT1B2,UGT1B5,UGT1A1が確認された。UGT1B1はデキサメタゾにより誘導された。UGT1A1とUGT1A2は3-methylcholanthrene(3MC)により誘導された。これら分子種のタンパク質の誘導とmRNAとの発現量との間には良い相関性がみられた。これらのデータは、各分子種が異なる発現調節を受けていることを示す。A1エクソン遺伝子の5'上流には、3MCに応答するDNA塩基配列(GCGTG)が存在することが、初代肝培養細胞系を用いたcat assay法により同定された。UGT1B1は構成的に発現している分子種である。以上の結課は、各分子種をコードする第一エクソンの5'上流にプロモータ/エンハンサー領域が存在し、異なる発現調節を受けていることを示す。現在、他の分子種についても発現調節領域の解析を進めている。全体として研究は順調に進展している。
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