研究概要 |
本研究ではグルクロン酸転移酵素遺伝子複合体の発現制御について以下の成果を得た。 (1)分子種を特異的に認識する抗体を作製し、またUGT1分子種を全て欠いたGunnラットミクロソームを用いて、UGT1A1とUGT2B1の分子種間でのタンパク質-タンパク質相互作用を検討したところ、これら分子種はダイマーあるいはオリゴマーを形成していることが判明した。また、ミクロソームにUDP-N-アセチルグルコサミンを加えると酵素の活性化が見られるが、複合体形成とこの活性化の間には強い相関関係がある。この結果は複合体形成が酵素活性の制御に関与していることを強く示唆する。 (2) UGT1遺伝子複合体から発現する分子種が異なる転写調節を受けていることを検討した。共通エクソンにもっとも近い第一エクソン(1A1)を利用して作られるUGT1A1は定常的に発現しており、ビリルビンの抱合化に関与している主要な分子種である。この分子種は抗高脂血薬であるクロフィブラートや合成ステロイド剤であるデキサメタゾンにより誘導される。一方、UGT1A6とUGT1A7は発がん物質である3-メチルコランスレンにより特異的に誘導される。1A6エクソンの上流にはシトクロムP4501A1誘導にかかわっているxenobiotic responsive element (XRE)が存在し、その発現誘導にはAhリセプターが関与していることを明らかにしている。これらの結果は、各第一エクソンの上流にプロモタ-/エンハンサー領域が存在し、各々の分子種が独立した発現調節を受けていることを示す。エクソン1A1, 1A2, 1A5, 1A7の上流の塩基配列のシークエンスも完了し、現在転写開始点と発現調節に関与するエレメントの解析を進めている。
|