カルシウムオシレーションが副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)のセカンドメッセンジャーであることを発見した。これは20年来の難問を解決したことになる。10pM程度の生理濃度のACTH刺激では細胞内でセカンドメッセンジャー探しが続いていた。本研究では高感度蛍光イメージング法により、上記の低いACTH濃度でさえ、ほとんど全ての副腎皮質細胞で細胞内カルシウム濃度がオシレーションを示すことを見いだした。カルシウム信号には大別して、次の3種類が観察された。1)カルシウム濃度の周期的変動、2)定常的にカルシウム濃度が上昇した状態、3)1)と2)の混合状態、であった。Ca信号を捉えるのに成功した原因は、0.01%と少量のTriton X-100を加えることでCalcium Green-1色素による細胞の染色が非常にうまく行くことを見出したことである。 共焦点顕微鏡を用いた断層撮影により、20分程度で低密度リポ蛋白質が受容体を介して細胞内のエンドソームに取り込まれる過程を可視化した。更に、ステロイドホルモンの素材であるコレステロールレゾルフィンがミトコンドリアに輸送され、P450sccによりプレグネノロンと蛍光性レゾルフィンに変換される様子をリアルタイムで可視化した。生きた単一細胞内におけるステロイドホルモン合成ステップのリアルタイムイメージングはこれまで世界で例はなく、大きな成果である。
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