平成7年度に於いて次の点に重点を於いて研究を行った。1)車軸藻cDNAライブラリーの作成とスクリーニング、2)車軸藻モーター蛋白質のアミノ酸部分配列の決定、3)車軸藻モーター蛋白質の分子形態の電子顕微鏡観察 植物細胞からのRNA精製は動物細胞を扱うのに比して困難と言われている。車軸藻は90%以上が液胞であり予想以上の困難を極めた。微量ではあるがmRNA精製が出来、発現系cDNAライブラリーを作成した。我々は既に得ている車軸藻モーター蛋白質の抗体を用いてcDNAライブラリーのスクリーニングを試みたが未だクローンを得るにいたっていない。 一方、モーター蛋白質のペプチドマイクロシーケンスからアミノ酸部分配列についての知見を得た。得られた配列についてホモロジーサーチを行った結果、鶏心筋ミオシンC端近くの配列と35%、また牛小腸ミオシンIN端近くの配列と64%の相同性が認められた。またアミノ酸部分配列の結果を基にプライマーを作成しスクリーニングのためのプルーブを得るべくPCRを試みた。幾つかのPCR生成物を得てシーケンスを行ったが、何れも求めるものではなかった。引き続きPCRの条件を種々検討して行くつもりである。 ロータリーシャドウ法により車軸藻モーター蛋白質の一分子形態を電子顕微鏡観察したところ、粒状の構造が多く見られたが、中に長い尾部と粒状頭部を持つものが観察された。 骨格筋ミオシンのin vitro運動観察より化学-力学エネルギーのカップリングに関する重要な知見を得て論文準備中である。この知見は単に筋収縮のメカニズムの解明への重要な手かがりとなるばかりでなく、車軸藻モーター蛋白質の機能特に骨格筋の10倍の滑り速度を発現する機構を考察する上で非常に重要である。
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