研究概要 |
車軸藻原形質流動を担うモーター蛋白質(車軸藻ミオシン)は、60um/sと骨格筋の10倍も速くアクチン線維を走らせる。この蛋白質の精製を終えて報告した。この'速い'機能の発現の分子的基盤を解明すべく、分子生物学的手法、電子顕微鏡観察、細胞学的、生化学的手法で多方面から取り組んだ。 先ず、クローニングと一次構造解析については、分子生物学的手法ゼロからの出発であったが間もなく軌道に乗った。車軸藻細胞は液胞が異常に大きく内質1%とも言われ、mRNAの精製は困難を極めたが、微量ながら純度の高い標品が得られるようになりcDNA Libraryを作成した。車軸藻ミオシン抗体によるスクリーニングでは未だクローンを得ていない。車軸ミオシンのペプチドマイクロシーケンス結果を基にプライマーを種々作成しPCRを試みたが産物は得られていない。然し、ミオシン共通配列を用いたPCRから、幾つかの異なるクローンを得た。その中には、特に既報の植物ArabidopsisのMyosin I,Myosin Vと非常に相同性の高いものが含まれている。'速い'ミオシンはMyosin Vではないかと考えられており、northern blot,RACE法などで解析を進めている。 従来、ミオシンの速さを決める要因はActomyosin ATPase活性と考えられてきた。然し、我々は、全く予期に反してミオシン自身のATPase活性の低さ、一律速段階での反応中間体Myosin・ADP・Piの寿命の長さ---が滑り速度を決めるという重大な知見を得て発表した。この事は、車軸藻ミオシンの世界一の'速さ'の機能発現の分子メカニズムを探る上で大きな研究の指針となる。
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