研究概要 |
骨格筋の興奮収縮連関の分子機構を解明するために,単離筋小胞体ベシクルを用いて,興奮収縮連関に関与する内在性因子の同定を行った。Ca^<2+>放出チャネル(リアノジン受容体)は細胞内(筋小胞体ベシクル外)Ca^<2+>濃度に依存するゲート機構を持つが,ベシクル内Ca^<2+>濃度を低くするとベシクル内のCalsequestrin(CSQ)が失われ,それと平行してCa^<2+>チャネルが開かなくなることから,CSQがリアノジン受容体を制御していることを見つけた。そこで,CSQが筋小胞体のどのタンパク質と結合しているかを調べるために,CSQを基質としたアフィニティーカラムを製作しCSQ結合タンパク質の探索を行った。その結果,96kDaのTriadin,30kdaのDIDS結合タンパク質,25kDaのJunctinと結合することが分かった。更に30kDaタンパク質を精製し,そのアフィニティカラムを使って結合タンパク質を調べたところ,CSQの他にJunctinとが結合することが分かった。これらの結果からこの3種のタンパク質は複合体を形成しリアノジン受容体からのCa^<2+>放出を制御している可能性が示された。更に30kDaのDIDS結合タンパク質の遺伝子をクローニングした。 筋小胞体からのCa^<2+>放出の分子機構を解明するために,T管膜と筋小胞体が結合をしたトライアドと呼ばれる膜分画を精製し,T管膜の脱分極によるCa^<2+>放出の速度論的解析を行った。T管膜内外のイオンの置換によって脱分極させ,筋小胞体からのCa^<2+>放出を蛍光色素Fura-2を用いて測定した。その結果,Ca^<2+>放出速度には2つの成分があることが確認できた。以前の報告とは異なって,速い成分は脱分極を大きくすると放出Ca^<2+>の量が増加したが,放出速度は変化しなかった。遅い成分は逆に放出量は変化しなかったが,放出速度は増加した。このことから速い放出は筋小胞体内でCSQに結合したCa^<2+>が量子的に放出されており,遅い成分は筋小胞体内の遊離のCa^<2+>が放出されるというモデルを提出した。
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