本年度得られた成果は以下の通りである。 1.平成7年度に得られたp26olfのcDNAをベクターに組み込み、大腸菌に導入し、p26olfの発現系を構築することが出来た。収量は培養液1Lあたり、数十mgである。精製は天然のp26olfのそれに従った。 2.ノーザンブロット解析によって、p26olfのmRNAの発現をカエルの種々の臓器で検討した。その結果、カエル嗅上皮に強いシグナルが観察された。加えて、肺や脾臓でも比較的強いシグナルが観察された。 3.ホモロジーサーチの結果、p26olfのN末半分はウシのS-100βに、またC末半分はS-100αに相同性を持つことが分かった。S-100蛋白質は2量体で機能することが知られているので、p26olfは1分子でS-100蛋白質の機能を果たしている可能性が高い。事実、S-100蛋白質が2量体を形成するのに保存されているアミノ酸が、p26olfでも保存されている。 4.明らかになったアミノ酸配列をもとに、部分ペプチドに対する抗体を作成した。この抗体は、ウエスタンブロッティングによるとp26olfに特異的であった。この抗体を利用して免疫組織学的にp26olfが嗅上皮のどこに存在するのかを検討した。その結果、嗅上皮の繊毛層に強い免疫陽性像が認められた。このことは、p26olfは嗅細胞の繊毛で発現していることを強く示唆している。以上の結果から、p26olfは嗅繊毛上で、ニオイ物質の受容、または嗅覚の順応に関与していることが示唆された。 現在のところ、どのような生理機能をもっているか明らかでないが、今後は発現蛋白質を使って検討する予定である。また、p26olfは単量体でS-100蛋白質の機能を果たすと考えられる。もしそうなら、S-100蛋白質2量体の構造とp26olf単量体の立体構造が似ているはずである。発現蛋白質を使い、この点を検討することを計画している。
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