研究概要 |
本研究で得られた成果は以下の通りである。 1.カエル嗅上皮より、カルシウム結合蛋白質を精製した。その見かけの分子量が26kDaであったのでp26olfと命名した。精製した蛋白質から蛋白質分解酵素で数種のペプチド断片を得た。断片についてアミノ酸の一次配列を決定し、この配列をもとにp26olfのcDNAを単離した。得られたcDNAから、アミノ酸配列を推定したところ、p26olfは217のアミノ酸からなり、計算上、24,493の分子量を持つもとが分かった。得られたcDNAをベクターに組み込み、大腸菌に導入し、p26olfの発現系を構築することが出来た。2.ノーザンブロット解析によって、p26olfのmRNAの発現をカエルの種々の臓器で検討した。その結果、カエル嗅上皮に強いシグナルが観察された。加えて、肺や脾臓でも比較的強いシグナルが観察された。3.ホモロジーサーチの結果、p26olfのN末半分はウシのS-100βに、またC末半分はS-100αに相同性を持つことが分かった。S-100蛋白質は2量体で機能することが知られているので、p26olfは1分子でS-100蛋白質の機能を果たしている可能性が高い。事実、S-100蛋白質が2量体を形成するのに保存されているアミノ酸が、p26olfでも保存されている。4.p26olfの部分ペプチドに対する抗体を作成した。この抗体を利用して免疫組織学的にp26olfが嗅上皮のどこに存在するのかを検討した。その結果、嗅上皮の繊毛層に強い免疫陽性像か認められた。このことは、p26olfは嗅細胞の繊毛で発現していることを強く示唆している。 以上の結果から、p26olfは嗅繊毛上で、ニオイ物質の受容、または嗅覚の順応に関与していることが示唆された。
|