アクトミオシン分子モーターの作動機構として、ミオシン分子がアクチン線維上をラチェットが一方向に動く機構と同じようにして滑ると考えたラチェット説が最近提唱されている。このラチェット説ではミオシン頭の滑りに対してアクチン線維に沿った非対称な場があることが仮定されている。本研究は、この仮定を分子計測法によって実験的に確かめることを目的としている。 本年度は、上記研究の予備実験として、光ピンセットでマイクロビーズを捕捉し、これを筋ミオフィブリル表面に露出したアクチン線維に付着させて、その運動を分子計測した。このため、まず既存の光ピンセット装置を調整して、約1ミクロン径のマイクロビーズを安定に捕捉できるようになった。一方、うさぎ骨格筋よりミオフィブリルを調整しその収縮特性を調べた。この結果、我々の得たミオフィブリル標品が上記の実験を遂行するにたるものであった(由利、山田: 平成7年度生物物理学会発表)。このミオフィブリルの表面に、光ピンセットで捕捉したマイクロビーズを接触させた所、マイクロビーズの種類によってその付着する様子が違うことが分かった。これは、マイクロビーズの表面の電荷の違いによると考え、目下、市販のマイクロビーズを色々購入して上記目的に最も適したものを選択中である。 次年度は、ミオフィブリルに代わって精製したアクチン線維を使って同様の実験を行う。さらにマイクロビーズの表面にミオシン分子をコートし同様な実験を行うことによって、ミオシン頭の滑り運動に対してアクチン線維に沿った非対称な場があるかどうか分子計測する予定である。
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