ショウジョウバエの杯期の中枢神経系は、正中線に沿って形成されるmidline cellとニューロブラスト由来の神経細胞及びグリア細胞からできている。前年度までの研究でニューロブラストの形成が、液性因子Hedgehogやホメオボックス遺伝子engrailed等のsegment polarity遺伝子間の共同的働きにより調節されていることを示したが、本年度の研究によって、正中線細胞形成にもHedgehogが基本的な役割を果たしていることが分かった。Hedgehogの温度感受性株を利用し様々な時期にHedgehogを不活性化させたり、逆に活性化させることでHedgehogを必要とする時期を特定した。Hedgehogは、ニュートブラスト形成の場合と同様、発生後3-4時間のごく短い期間だけ必要であることが分かった。 Hedgehogは、中枢神経系では殆ど発現していないので、表皮細胞由来であると推定できるが、表皮クチクラ形成に必要なHedgehogとは異なる制御を受けていると考えられる。 アクソンの伸展にNADPH-diaphorase活性が関わっていることが最近の研究で分かってきた。そこで、将来的な研究に備えて、diaphorase機能的ホモローグであり、様々なニトロ化合物を還元する大腸菌のnitroreductase(NfsA)について基本的な分子生物学的・生化学的な性質を調べ、現在ハエで形質転換体を作ることを試みている。
|