研究概要 |
我々は、B型肝炎ウイルスX蛋白に結合する宿主蛋白の探索から、RNAPI,II,IIIに共通するサブユニットであるRPB5をX結合蛋白として単離した。本研究は、両者の相互作用による転写開始機能の修飾を分子機構として解明するために、RPB5の機能標的を探索し、X蛋白の役割を検討し、RPB5の構造と機能の解析を行った。 (1)RPB5は、X蛋白と相互作用をすると共に、転写基本因子TFIIBと特異的に結合することがin vitro 及びin vivoで確認された。TFIIBはRPB5と共にHBV X蛋白と特異的に相互作用し、3者の複合体形成がin vitro及びin vivoで確認した。 (2)X蛋白のトランス活性化ドメインの置換変異の解析から、トランス活性化ドメイン内にRPB5及びTFII結合の区別される領域の存在が示され、X蛋白のトランス活性化にはRPB5とTFIIBとの結合が何れも必要であることが示された。3者の複合体形成と3者間結合のXトランス活性化能への効果は、X蛋白は転写開始複合体形成の段階でRNAPとTFIIBの結合を安定化する可能性が示唆された。 (3)人工的な系であるGa14x5CATを用いた検討の結果、HBxはactivated Transcription系でco-factor機能を保持していた。X蛋白が機能する段階の検討が今後に残された。 (4)RPB5がX蛋白と相互作用し転写の効率化をもたらす結果は、X蛋白がRPB5と内在性の宿主蛋白との相互作用を排除する可能性がある。この可能性を検討するために、RPB5結合蛋白のcDNA単離をfar-Westem法を用いて行い、I種のcDNA(RPB5-mediating-protein : RMP)を単離した。全長cDNAの単離を進めた結果、RMPは新規遺伝子であった(投稿準備中)。予備的結果は、RMPがX蛋白によるトランス活性化に拮抗した。この結果はRMPが抗X遺伝子として機能することを示唆した。RMPが新規のがん抑制遺伝子である可能性もあり、今後の系統的な解析が必要となった。
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