研究計画の要である、構造単位増設の原型となる最小のRNAを作成するため、活性が高くまたサイズが小さいRNA酵素を、さらにトリミングし、そのサイズを極限まで小さくすることをこころみた。その結果、この計画の原型となるRNAの作成には、困難が伴うことがあきらかになった。原因は、このような小さなRNA酵素は、その機能発現のために未知の複雑な分子内相互作用を必要としており、その一部でも欠失するとRNA酵素の活性を著しく低下させることにあるため、さらなるトリミングは難しいためであると考えている。 しかし、この計画の要となるin vi tr o sel ecti onと col ony assayをくみあわせた機能構造単位構築のための実験システムの試作には成功した。これはこの研究計画が、テクニカルには全く問題がなく、大筋では予定通り遂行できることが、実験的にあきらかになったことを意味する。このシステムの有効性をテストすることを目的に、テトラヒメナ由来のRNA酵素のひとつの機能構造単位の解析をおこない、塩基配列とそれにより決定される構造との関係について興味深い知見を得た。研究の実施にともない派生したこの研究は、当初の計画にはないものではある。しかし、その結果はRNA酵素の構築に関して、新規な知見でありかつ意義の高いものであるため、さらにこの研究を続ける予定である。 したがって、計画遂行の基本路線に影響はないが、原型となるRNAの作成については再考を要するため、現時点では、その変更について模索中である。 また、現在、平成8年度の計画に必要な、RNA酵素への点変異の導入による突然変異体作成の基礎となる実験をer r or po one PCR法を用いておこなっている。その結果、計画実施にあたり、この手法の導入も可能であるとの結論を得た。
|