マウス神経特異的RNA結合蛋白質であるmHuCは、選択的スプライシングによって2種類のisoform(mHuC-L及びmHuC-S)を産生するが、この両者のAU-rich elementに対するRNA結合能を詳細に解析した結果、ほとんど同一の特異性を有することが明らかになった。しかしながら、両者の違いである7アミノ酸残基の中に特定の蛋白質リン酸化酵素の標的となる配列が見出されたことから、mHuC-L蛋白質が細胞周期に関連する制御を受けている可能性が示唆された。また、mHuC蛋白質は3個のRNA結合ドメインを持つが、実際にAU-rich element配列を認識し結合能を担っている領域を特定した結果、アミノ末端側の2個のRRMだけで完全なmHuC-L蛋白質とほぼ同等のRNA結合能や結合特異性を有していることが明らかになった。さらに、これまで機能不明であったカルボキシル末端側のもう1個のRNA結合ドメインについて、各種RNAとの結合実験を行ったところ、このドメインがほとんど全てのmRNAの3′末端に存在するポリ(A)配列に結合することを発見した。この同一蛋白質内に存在する2種類のRNA結合能によって、mHuCを含めた一群の神経特異的RNA結合蛋白質がproto-oncogeneなどの細胞増殖を制御するmRNAに特異的かつ効率良く結合することが強く示唆された。一方、mHuCと類似のマウスMel-N1蛋白質が細胞質内に局在することや、自分自身をコードするmRNAの3′非翻訳領域に特異的に結合することを見出し、この蛋白質の発現が自己制御されている可能性を提唱した。
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