老化にともなって、シナプスからのアセチルコリンの放出が低下することと、その原因として電位依存性カルシウムチャネルを介するカルシウム流入の減少することを明らかにした。さらに、カルシウムチャネルの効率はシアル酸化合物によって高められることを見い出した。 シナプスの単離標品であるシナプトソームを用いて、アセチルコリンの合成と放出を調べたところ、老齢脳シナプスにおいてアセチルコリン合成能は維持されている一方、脱分極刺激に応じるアセチルコリンの放出が低下していることがわかった。神経伝達物質の開口放出は、シナプス外から流入するカルシウムによって引き起こされることが知られているので、老化にともなう電位依存性カルシウムチャネル機能の変化をみた。脱分極刺激によるシナプス内Ca濃度上昇をFure-2を用いる分光学的手法で調べたところ、老齢で有意に低いことが示された。そのCa異常の始まる時期はアセチルコリン放出の加齢変化と一致しており、カルシウム流入減少がアセチルコリン放出低下の主要な原因であることが示唆された。 老化でシナプスへのカルシウム流入が減少する結果、アセチルコリン放出が低下することがわかったので、カルシウムチャネルの効率を高めることによってシナプス機能の改善を図ることを試みた。カルシウムに強い親和性をもつガングリオシドが脱分極刺激時のカルシウム流入を高めることと、ガングリオシドの合成アナログ-α-シアルコレステロールが同様に作用をもち、老化シナプスの機能改善に用いられる可能性が示唆された。
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