研究概要 |
レチノイン酸により神経細胞分化するP19EC細胞から、神経細胞分化過程で発現する遺伝子のカタログ化を行なった。その過程で神経系に特異的な遺伝子および非特異的な遺伝子が分離され、後者として糖蛋白Asn結合糖鎖合成に必須なオリゴ糖転移酵素βサブユニットのマウスおよびヒト遺伝子を分離解析した(Yamagata et al.1997)。酵母ではβの欠損が致死をもたらすことから,β蛋白の生存における重要性を明らかにすべく部分欠損マウスの作成を試みている。前者としては新規の遺伝子であるRA70、RA175、RA375の解析をおこなった。RA375は神経に発現するZincフィンガー遺伝子である。RA175は既知の遺伝子とは全くホモロジーを持たず、神経系以外では上皮に発現し、Shh-PTCの発現と重なりあう。現在、Shh-PTCシグナルの下流に位置する遺伝子と考え精力的に機能を解析している。一方、RA70はレチノイン酸に速やかに応答する遺伝子でSrc結合蛋白とのホモロジーがある。発生初期の神経管に強く発現し、発達とともに速やかに減少する。また、精素の精母細胞に特異的に発現することから、レチノイン酸と増殖因子とのシグナルとの接点を結ぶ遺伝子として神経細胞の増殖、文化、形態形成、生殖細胞の減数分裂に関係することが考えられる(Momoi et al.投稿準備中)。今後の研究の発展が大いに期待される遺伝子である。
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