研究概要 |
2年計画の全体として(1)ラット脳海馬皮質の切片回転培養の安定化・高収率化、(2)培養神経細胞の生細胞染色法の確立、(3)培養海馬切片のシナプス伝達効率変化を誘発する条件の探索と最適化、(4)切片中の神経細胞の連続的な形態観察のためのハードウェアおよびソフトウェアの設定、(5)培養神経細胞への外来遺伝子導入・発現法の確立、という計画を立て平成7年度においては(1)(2)(3)を、平成8年度において(4)(5)を行うこととした。さて、本年度(1)については培養基質であるカバーグラスのポリカチオンコーティング、回転速度の二段階化、培地量の二段階化などによって、既報の方法の収率(20〜30%)をはるかにしのぐ(培養開始後2週間の時点で70%以上)高安定・高収率の切片培養を実現した。(2)については、当初DiI、DisC3(5)などの脂溶性蛍光色素による細胞膜の物理的染色を行ったが、神経細胞のみならずグリア細胞も強く染色され、次ステップの形態観察を可能にするため染色によってコントラストを上げるという目的に合致しなかったため、方針を外来遺伝子の導入による生体染色法に転換した。アデノウィルスベクター系に着目し、これにクラゲ由来の緑色蛍光蛋白(GFP)遺伝子を組み込んで導入試行を開始した。その結果、従来困難とされていた神経細胞など非増殖性の細胞への外来遺伝子の導入・発現に成功した。現在,プロモーターを神経特異的な蛋白のそれに組替えたベクターを作成中であり、これに成功すれば、(2)と(5)を同時に達成できることになる。(3)、(4)については現在準備中である。
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