本研究の目的はラット線条体の薄切スライス標本を用いたスライスパッチクランプ法により、線条体内のコリン作動性ニューロンおよび中型有棘細胞をめぐる局所神経回路の生理学的性質を調べることである。1997年度は、とくに線条体コリン作動性ニューロンに対して黒質からのドーパミン性入力がどのような働きを及ぼすかについて調べた。結果は、次の通りであった。(1)ドーパミンは殆ど全例で(1/26)直接コリン作動性ニューロンに働いて脱分極する。その脱分極は多くの場合(19/25)膜のコンダクタンスの増加を伴う。(2)ドーパミン受容体のD1/D5型のアゴニストは殆ど全例で(1/30)内向き電流を引き起こしたが、それには膜のコンダクタンスの増加を伴うもの(12/29)と減少を伴うもの(9/29)があった。(3)それに対して、D2/D3/D4型のアゴニストは過半数において(13/22)内向き電流を生じたが、外向き電流を生じる細胞も半数近くあった。両者とも殆どの場合膜のコンダクタンスの増加を伴っていた。adenylate cyclaseのactivatorであるforskolinは全例で内向き電流を引き起こしたが、やはり膜のコンダクタンスの増加を伴うもの(4/9)と減少を伴うもの(5/9)の2種類に分かれた。
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