本研究の目標は運動学習において可塑的変化を生じる線条体内のコリン作動性ニューロンおよび中型有棘細胞をめぐる局所神経回路の生理学的性質を調べることであった。平成7年度は、まず線条体コリン作動性ニューロンがdirect pathwayおよびindirect pathwayの中型有棘細胞からどのような入力を受けるかについて調べた。その結果、コリン作動性ニューロンはdirect pathway、indirect pathway双方の中型有棘細胞から前者はサブスタンスP、後者はエンケファリンにより、相反的入力を受けることが明かとなった。両者ともGABA細胞なので早い応答としては同じ過分極性の応答、抑制であるが、その後約1分近くの長い脱分極(direct pathwayによる)あるいは過分極性(indirect pathwayによる)の応答を示した。平成8年度以降はコリン作動性ニューロンに対するドーパミンの作用を調べた。その結果、ドーパミン入力は線条体内のコリン作動性ニューロンに働いて、D5型受容体に働いて、adenylate cyclase系を活性化することにより、膜の脱分極をひき起こした。ドーパミンによるD5受容体の活性化による膜の脱分極は結果的に皮質や視床からの入力による発火の閾値を押し下げることになり、microdialysisで観察されたアセチルコリン放出の促進をひき起こす結果となるものと考えられる。以上の結果から、コリン作動性介在ニューロンはdirect pathwayおよびindirect pathwayの投射ニューロンから相反的入力を受け、その結果を再び投射ニューロンに出力すること、また、黒質からのドーパミン入力は直接このコリン作動性ニューロンからのアセチルコリンの放出をコントロールすることで、投射ニューロンの活動を制御していることが明らかとなった。
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