研究課題/領域番号 |
07458222
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大槻 磐男 九州大学, 医学部, 教授 (70009992)
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研究分担者 |
弥永 富美 九州大学, 医学部, 助手 (50274436)
森本 幸生 九州大学, 医学部, 講師 (50202362)
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キーワード | 筋収縮 / Ca感受性 / アシドーシス / トロポニン / pH感受性 |
研究概要 |
平成8年度は当初の研究実施計画に沿って以下のとおり研究を遂行した。 1.新生ウサギ心筋収縮のpH感受性におけるトロポニンIの役割。前年度に開発したウサギ左心室内柱スキンドファイバー標本を用いて、ウサギ誕生前後で大きく変化するCa収縮pH感受性変動の原因を検討した。先ず胎児期にはトロポニン三成分のうちトロポニンIが遅筋型であり、誕生後に心筋型に置換することが判明したので、ウサギ心筋および遅筋(ヒラメ筋)よりトロポニン三成分を作製しハイブリッドトロポニンを成熟心筋、胎児心筋より作製したスキンドファイバー標本に組み込んでpH感受性を検討した。その結果トロポニンIアイソフォームの変化がpH感受性変化をひきおこすことが明らかとなった。 2.各種横紋筋筋原線維収縮pH感受性の比較。脊椎動物横紋筋由来の筋原線維標本ではpHを下げるとつねにCa感受性低下が観察されたが、従来から報告されているようにpH7.4-6.2の範囲では心筋>速筋>遅筋の順pHであった。なおpH6.8-6.2で遅筋pH感受性変化が大きいのに対して、心筋・遅筋はpH7.4-6.8、pH6.8-6.2の両範囲で同様のpH感受性を示すことが判明した。脊椎動物筋原線維標本(甲殻類2、軟体動物2)のpH感受性についても検討を行いpH7.4-6.2の範囲では心筋より多少小さいが速筋より大であるとの所見が得られた。またpH7.4-6.8の範囲ではpH6.8-6.2よりいずれの標本についても高いpH感受性を示した。これは無脊椎動物筋原線維のpH感受性は脊椎動物の三種の筋原線維のいずれとも異なることを示している。 3.トロポニンサブユニットcDNAクローニング、大腸筋内における発現、および性質の検討。 大腸菌内で発現させたヒト心筋トロポニンTを精製することに初めて成功した。この組み換えトロポニンTはウサギ心筋トロポニンC及びIと相互作用を示し、複合体を形成した。ウサギ心筋スキンドファイバー標本内で内在性トロポニンTをこのヒト心筋トロポニンTで置換し、その効果を検討した。その結果ヒト心筋トロポニンTで再構成したスキンドファイバーは、Ca感受性、協同性、pH感受性、最大張力などのCa活性化の特性に関してウサギ心筋トロポニンT再構成標本と全く同じ性質を示した。これらの所見は今回発現・精製したヒト心筋トロポニンTが構造機能の両面から生理的実験検討に耐え得るものであることを示すものである。現在ヒト心筋トロポニンC及びIについても同様の研究が進行中である。
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