研究概要 |
本年度は当初の実験計画に従って以下の成果を得た。 横紋筋収縮のCa感受性は酸性pHで低下するがその大きさは心筋>骨格筋速筋>骨格筋遅筋の順であることが知られている。この違いに対するドロポニンサブユニット(C及びI)の関与について以下の通りに検討した。三種の横紋筋はそれぞれ別個のトロポニンIアイソフォームを発現しているが、心筋及び遅筋のトロポニンCは同一である。従ってトロポニンIには三種、トロポニンCには二種のアイソフォームが存在する。本研究ではウサギ心室筋スキンドファイバー系の張力発生を指標としてトロポニンサブユニット交換法を用いて、ファイバー内のトロポニンアイソフォームについて種々のハイブリッド化を行いCa感受性のpHによる影響を検討した。その結果中性(pH7.0)条件下でのCa感受牲は、心筋(又は遅筋)トロポニンCに対しては遅筋TN・I>心筋TN・I>速筋TN・Iの順に減少し、速筋トロポニンCに対しては速筋TN・I>遅筋TN・I>心筋TN・Iの順であった。この所見はトロポニンCのCa感受性がトロポニンIとの相互作用を介して微妙に調節されていることを示している。また酸性pH(pH6.2)でのCa感受性の低下の大きさはCC=FC>CF=FF>S'C=SF(TN・I,TN・Cの組み合わせ:C,心筋;F,速筋;S,遅筋)、の順であることが明らかとなった。この他ヒト心筋トロポニンC及びIをクローニングし大腸菌内で発現精製し上述の方法で作用を検討した。その他無脊椎動物ホタテ貝閉殻横紋筋Ca収縮のpH感受性についてもトロポニン系の関与が明らかになった。
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