本年度は、申請した内容に関して以下の4点の問題に関する研究成果を得て国際的科学誌に内容を公表した。(1)匂い順応のメカニズムに、Caイオンが関わることを見いだし、実際にはCaは細胞内から情報変換チャネルを閉じる働きを持つことで、細胞の応答感度を調節することを明らかにした。(2)嗅細胞は伝導性の軸索を持ち、活動電位を発生する。従来は、この活動電位はNaチャネルによってのみ発生するものであるとの考えが有力であったが、今回、単離嗅細胞に膜電位固定法を適用し、詳細な解析的研究を行った結果、T-type CaチャネルがNaチャネルと協同する形で活動電位の発生に関与していることが明らかとなった。(3)ある種の匂い分子は、嗅細胞の興奮制を弱める鎮静作用を持つことが知られているが、我々は、嗅細胞に存在する各種イオンチャネルに対する匂い分子の効果を検討した。その結果、有効濃度に差があるものの、すべてのイオンチャネルが匂い分子によって抑制されることが証明された。その効果は、局所麻酔剤のイオンチャネルに対する効果ににている。(4)嗅覚研究に関連して、化学受容の観点から味細胞の電気応答を記録することに成功した。カエル舌から単離した味細胞に苦み物質の代表であるキニ-ネを与えたところ、陽イオン選択性イオンチャネルが開口することを見いだした。
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