研究概要 |
ヒトのミトコンドリア病では、その原因性の突然変異がmtDNAのtRNA^<Leu(UUR)>遺伝子にホットスポットとして集中していることから、それぞれに対応する位置に人工的に突然変異を起こさせたマウスmtDNAの断片を含むプラスミド(BluescriptKS^+)の作製を試み、すでに4種類の突然変異体の作製に成功している。一方、作年度内に樹立をめざしていたマウスのp^o細胞に関しては、多くの試行錯誤の結果ごく最近樹立に成功し(投稿準備中)、PCR法によってもmtDNAの存在は確認できないことから、本申請の最も大きな障害がクリアされたことになり、今後の研究に有効に利用できるはずである。“マウスのp^o細胞の樹立"に成功したことから、本申請の最も大きな障害がクリアされたことになり、今後はMIN6細胞からのp^o細胞の樹立と、すでに作製が完了している人工的に突然変異を起こさせたマウスmtDNAを、マウスのp^o細胞のミトコンドリアに導入する実験系の確立が焦点となった。 今年度は、すでに作製が完了している人工的に突然変異を起こさせたマウスmtDNAを、マウスのp^o細胞のミトコンドリアに導入する実験系の確立を目指しており、すでに、エレクトロポレーション法を用いると、少なくとも5kb程度のmtDNA断片はミトコンドリアに導入できることが確認できた。現在は、さらに16kbの全mtDNA導入の実験条件の設定を重点的に行っているところである。 一方、この実験系が成功しなかった場合を想定して、mtDNAの体細胞突然変異が比較的多量に存在することが確認された老化マウスの脳の組織(Takai,D and Hayashi,J.-l.,Biochem.Biophys.Res.Commun.217:668-674,1995)のミトコンドリアをマウスのp^o細胞へ導入したところ、欠失突然変異を持つmtDNAが確認できたことから、今後この細胞のミトコンドリア画分をマウスの受精卵に直接導入して、取りあえずできるだけ早くミトコンドリア病の病態モデルマウスの完成を目指したいと考えてる。一方、グルコース濃度に依存したインスリン分泌をするMIN6細胞のp^o細胞は樹立されていないが、これに代わって、この細胞のミトコンドリア呼吸機能を人工的に阻害し、mtDNA突然変異が導入されたのと同じ状況を作り出したところ、グルコース濃度に対応したCa^<++>流入とインシュリン分泌が著しく抑制されることが明らかになった(投稿準備中)。
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